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無料記事41:世界の動物保護団体、どういった活動をしている?

2026年9月4日 掲載

目次:
世界中を見てみると、動物保護団体は多種多様
動物保護団体の理念は様々
動物保護団体が手を差し伸べている動物は犬猫だけではない
動物保護団体の多岐にわたる活動や事業
アニマル・リテラシーを身に付け、自分の納得のいく動物保護団体を支援する


世界中を見てみると、動物保護団体は多種多様

動物を守り、保護する活動を展開させている動物保護団体は世界中に数多く存在するが、日本人の多くは、「動物保護団体」というと犬や猫などのペットとして飼われている動物の救護活動や譲渡事業に取り組んでいる団体を思い浮かべるのではないだろうか。しかし、世界中の様々な動物保護団体を見ていくと、不幸な犬猫たちに手を差し伸べるだけではなく、実に広い活動範囲を網羅している多種多様な団体があることがわかる。動物保護団体は、様々な場面において、ペットのみならずあらゆる種類の動物たちに対し、多岐にわたる取り組みを通して支援の手を差し伸べる活動を展開させているのである。本無料記事では、「犬や猫の保護活動」という多くの日本人が持つ動物保護団体のイメージとは裏腹に、世界中において動物保護団体が実際に展開させている多彩な活動について概観することとする。
なお、当法人は特定の動物保護団体を支持する立場にはない。この点を明確にするために、本記事ではなるべく特定の動物保護団体に言及せぬようにしており、本記事で触れたような活動を具体的に展開している団体にご関心のある読者は、各々詳細を調べて知識を深めてもらえれば幸いである。

 

動物保護団体の理念は様々

動物保護団体と呼ばれている組織は、その名の通り皆「動物に手を差し伸べる」という共通の目的を掲げているが、世界中でたくさんの団体が活動している中、そもそも動物保護団体間でも理念や考え方の違いがあるという点を理解する必要がある。動物に対する配慮について考える際の枠組みは一つだけではない。例えば、「動物福祉(アニマルウェルフェア、animal welfare)」という概念を元に動物の配慮について考えると、身体的・精神的なものを含むあらゆる動物のニーズを満たし、動物の生活の質を担保した状態が理想と言える。動物福祉の理念を掲げた動物保護団体であれば、動物が置かれている状況が、客観的に評価して、彼らの様々なニーズをできる限り満たしている状態であることを目指しての活動となるであろう。これは、必ずしも現代社会で許容されている動物の使役や利用(例えば動物由来の製品の消費や動物実験の実施など)の廃止を目指すことと同義ではない。例えば動物由来の食品を食べることについても、動物の福祉の向上を目指すのであれば、それ自体の廃止よりも、畜産動物が生活している状況において、飼養管理体制が適切で動物が生きている間、彼らの様々なニーズが担保できている状態を確保する活動を展開させるであろう。
一方で、動物権利(アニマルライツ、animal rights)を謳う団体は、動物があらゆる幸せを追求する権利を行使できる世の中を目指すであろう。したがって、人間の都合で動物を使役したり、利用する習慣が動物の幸せを追求する権利の行使を妨げる場合は、その習慣そのものの廃止を目指すというのが動物権利の理念にのっとった活動となるわけである。
このように、ひとえに「動物保護」と言っても、動物に対する配慮がどのような理念や哲学のもと実践に移されるかによって、活動の内容やあり方には大きな振り幅があるわけである。加えて、すべての活動や事業において一つの理念のみを掲げるというような団体よりも、実際は活動や事業(または対象とする動物)によって掲げる理念を変える言わば「モザイク」的な活動をしている団体が多いという実情もある。例えば、先ほどの動物由来の食品や動物実験の例だと、化粧品の動物実験の廃止を目指しているが、畜産動物に対する活動については肉を食べること自体の廃止を目指さず、畜産動物の置かれている境遇の改善を目指している…などという団体も存在するわけである。

 

動物保護団体が手を差し伸べている動物は犬猫だけではない

前述した通り、世界の様々な動物保護団体の活動対象、すなわち差し伸べた手の先にいる動物たちは、決して犬猫やペットとして飼われている動物だけではない。もちろん、不幸な境遇に置かれた犬猫たちの救護や譲渡事業を展開させる団体も非常に多いが、例えば、上述した畜産動物や実験動物、さらには自然の中で生息する野生動物はもちろん人工飼育下の野生動物(所謂動物園や水族館にいる展示動物)など、様々な動物たちが、世界中の動物保護団体の活動対象となっている。
畜産動物については、動物由来の食品を食べることを最終的に廃止したり、その消費量を減らす、また畜産動物の生産管理体制においてより動物のニーズに配慮した方法を導入してもらうなどの目標に向けて様々な動物保護団体が活動を展開させているわけであるが、「畜産動物に配慮を!」、「動物由来の食品を食べることをやめましょう!」などと単に主張するだけではこの目標を達成することは難しい。動物由来の食品には様々な利害関係者がかかわっている。畜産動物を生産している農家や生産者団体などの業界団体、食品を製造している企業、その食材を使っている飲食業、そして畜産動物の扱いや食品衛生などを司る当局… 自分たちの目標とする動物の扱いを実現するために、動物保護団体は日々こういった関係者たちに働きかけを行っているのである。また、動物由来の食品が生産される背景には、当然のことながら、一般の消費者が作り出す需要がある。そのため、一般社会に畜産動物が置かれている境遇や、自分たちが目指す理想的な動物の扱いについて発信する必要がある。例えば、「動物の福祉に配慮した製品を購入するようにしてほしい」など、消費者に情報発信した上で具体的なアクションを求めるなどという活動もよく展開されている。
実験動物についても、多くの動物保護団体により、同様の活動が展開されている。畜産動物のように、実験動物を取り巻く利害関係者も非常に多い。動物実験は実に様々な業界において実施されている。一般的に広く知られているのは医薬品であろうが、その他化粧品、農薬、食品、家庭用洗剤、工業化学物質等々、私たち人間が使うあらゆる化学物質を用いた製品の開発や安全性の担保に実験動物が使われているのである。また、医療分野などの基礎研究や、さらには医療や獣医療の教育機関においても実験動物が活用されている。したがって、動物実験を用いて上記のような製品を製造している企業や動物実験を行っている研究・教育機関はもちろん、それぞれの分野を管轄する複数の当局が皆利害関係者となる。昨今、動物実験に代わるヒト生物学を基盤とした新たな技術が多く開発される中、そういった「動物実験代替法」に動物実験の手順を置き換えて動物実験をなくすことを陳情したり、完全に動物実験を廃止することが難しくても、こういった動物実験代替法を活用して使われる実験動物の数を削減するよう陳情する団体も多い。さらには、実験動物を取り扱う技術者などの関係者を巻き込み、実験動物の飼養管理基準の策定に乗り出す団体もいる。加えて、実験動物についても一般消費者が使う製品がかかわっていることが多いため、畜産動物のような需要を作り出している社会に対する啓発活動も盛んに行われている。
「野生動物の保護」というと、多くの者が密猟などで傷ついた動物のサンクチュアリ(保護施設)の運営や、野生動物の生息域の保全などの活動をイメージするであろう。もちろん、野生動物を対象として活動する動物保護団体の中にはこういった取り組みを展開させている団体も多いが、野生動物についても直接動物に携わる活動以外に多くの事業が展開されている。畜産動物や実験動物と同様、野生動物にかかわる当局や政策立案者への働きかけや、場合によっては警察当局や税関当局、さらにはレンジャー当局などと協働して密猟・密輸対策を講じることもある。また、野生動物の身体の部位や生身の野生動物そのものの商取引の背景にも、前述したような消費者が作り出す需要がある。野生動物の身体の部位は象牙のようにアクセサリーや民芸品に使われるものや、サイの角1)など地域によっては伝統薬の原料として需要があるものもある。生身の野生動物は、エキゾチック・ペットの市場で多く商取引されており、日本にも市場がある。2)こういった需要を作り出している客層や地域に対して啓発活動を展開させ、需要そのものを根絶したり、減少させるという活動に力を入れている団体もいる。
自然の生息域で暮らす野生動物以外にも、私たち人間社会は動物園や水族館などの所謂展示施設やエンターテインメント(サーカスなど)において、野生動物を自分たちの懐深くに入れている。このような所謂展示動物たちを対象とした活動を展開させている動物保護団体も多く、展示施設での野生動物の利用や飼養管理の廃止を求める団体もいれば、動物園や水族館などと協働して、展示動物たちの飼養管理体制の向上を目指す団体もいる。言うまでもなく、こういった動物を対象としている動物保護団体らも、当局、業界団体(動物園水族館協会など)、個別の展示施設や運営企業等々、様々な利害関係者に働きかけを行うと同時に一般消費者(ここでも一般消費者の「需要」という背景要因がある)に対する情報発信や啓発活動を展開させているのである。
最後に、日本においてはあまり馴染みのない労働力として使われている作業動物(使役動物)も、世界においては動物保護団体の支援対象となっていることもある点を付け加える。荷馬車を引く馬やロバや、畑仕事を手伝う水牛などである。発展途上国などで多いこういった労働力として使役されている動物たちは、しばしば生活水準が低い状況で労働を強いられている現状がある。「劣悪な環境で働かされているのであれば、飼い主から動物を引き離して保護すれば良い!」と思う者も多いかもしれぬが、人間は動物の労働力がないと生活が立ち行かなくなり、また動物も世話をしてもらう者として飼い主に頼って生きているので、「どちらか一方だけを救う」ということが難しい現状がある。このような状況において、多くの動物保護団体は、労働力として動物を使役している者が多い地域において、動物たちに無償または低額の獣医療を提供したり、動物の適切な飼養管理について知識を身に付けることができるように飼い主教育を展開させたりしている。動物はこういった支援により健康と福祉の向上が期待でき、また動物が健康であれば、労働力としてのパフォーマンスも改善し人と動物双方の生活水準を向上させることにも貢献できるという正に「ワンウェルフェア(One Welfare)」的なアプローチの活動と言えよう。

 

動物保護団体の多岐にわたる活動や事業

世界中の様々な動物保護団体が救いの手を差し伸べる対象としている多岐にわたる動物たちについて触れてきたが、ここまで読み進めていただいた読者であれば、動物保護団体の活動が、一般社会の多くの者がイメージしている動物の救護活動や譲渡事業のように、動物そのものを直接救済する活動にとどまらず、様々な場面において複数の利害関係者と携わるものであることを理解してくれていることであろう。ここで、その活動や事業の振り幅を改めてみてみたい。
確かに、生身の動物を直接救護する活動を展開させている団体も多いが、ペットとして飼育されている動物一つをとっても、「今置かれている状況でその動物が生活し続けられるような支援」を提供している団体も多い。例えば、生活に困窮している者が多い地域などでは、無償・低額の獣医療や不妊・去勢手術を提供している動物保護団体はたくさんある。移動診療車で回って、こういった地域の飼い主たちに、不幸な犬猫を増やさないための不妊・去勢の重要性を啓発すると共に、診療車でそういった処置を提供するという活動も多い。また、日本でも地域猫活動が近年盛んに行われているが、世界各国、こういったコミュニティー全体で世話をしている犬猫の個体群を管理するというプログラムも多くの動物保護団体が展開させている。特に犬は狂犬病をはじめとした人獣共通感染症が一般社会にも広く認知されているため、地域犬の個体群管理は、放浪する犬たちが人道的な扱いを受けることを担保することと同時に、地域社会の人間側の公衆衛生の観点からも意義のあるプログラムとして位置付けられている。
また、前述したように、直接生身の動物にかかわらず、社会の啓発や教育に力を入れている団体も多い。これもまた前出であるが、社会啓発に取り組む背景には、多くの動物問題に「需要」と「供給」の構図があり、一般社会が自分たちの求めが最終的に動物たちを苦しめる結果になることを知らずに需要を作り出し、それに応じて動物たちが搾取されるということがある。要するに、自分たちが作り出す需要が動物たちを窮地に陥らせているという点を一般社会に知ってもらうことにより、需要を減らすということを目指すということである。また、社会啓発の先には需要の削減のみならず、一般社会に問題を知って具体的にアクションを起こしてもらうという道筋もある。例えば、化粧品の動物実験を法令で禁止・規制する国や地域が増えてきているが3)、こういった規制改革の背景には、署名などで集めた市民の声を動物保護団体が政府や当局に届けるという活動がある。4)
これに関係して、所謂陳情と呼ばれている政策立案者や当局への働きかけも動物保護団体が展開させている活動の一つであるが、署名などを通して単に市民の声を届けるのみならず、法案の文言や内容の提言や、政策立案者に課題をより的確に理解してもらえるような勉強会の企画など、政策にかかわる者に積極的に情報提供をする活動を展開させている団体も目立つ。
また、こういった一般社会や政策に携わる者への働きかけには、「武器弾薬」が必要である。何故、その特定の課題が問題視されているのか、問題の規模はどの程度か、どういった解決策が考えられるのか等々、周囲に訴えかけるための情報やデータが必要ということである。動物の世界も今やエビデンスベースである。そのために、特に財力やマンパワーなどの資源を有する規模の大きい動物保護団体は、調査研究を手掛けたり委託することも多い。その課題が世間にどのようにして捉えられているのかに関する意識調査や、実際に課題の内情を探る研究などである。加えて、調査研究に関連した点をもう一つ挙げると、こういった当該課題について理解を深めることにつながる調査研究や、動物の境遇を改善することに直接つながるような科学技術の開発研究に対して、動物保護団体が助成金を提供し、このような知見の蓄積に貢献することもある。例えば、前述した実験動物を使わない試験や研究方法の開発や、より畜産動物の福祉に配慮した生産方法を可能にする科学技術などである。

 

アニマル・リテラシーを身に付け、自分の納得のいく動物保護団体を支援する

日本においては、動物保護団体というとまだまだ犬猫などのペット動物の保護や譲渡事業が主流であるが、一口に「動物を保護する活動」と言っても、世界を見渡すと幅広い種類の動物に、実に様々な方法で支援の手を差し伸べる団体がたくさん存在する。また、言うまでもなく、動物保護団体の最終目標はどこも動物を助けるということであるが、団体ごとに理念や考え方の違いがあるが故に、「どのようにして」動物を助けるかというところも多種多様であるという点も理解する必要があるのである。
「動物を助ける」という活動を展開させている団体というだけで、「社会にとって良いことをしているに違いない!」とあまり考えずに寄付をしてしまう者も多いのではないだろうか。最近では、日本においても動物保護団体の活動範囲が広がりを見せており、本記事で言及したような多種多様な事業を展開させている団体も増えてきているようである。寄付や支援をする際には、アニマル・リテラシーを身に付けた上で、多岐にわたる団体の中から自分が納得のいく活動を展開させているところを選びたいものである。

 
  • 1) https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/7633/
  • 2) https://www.ben54.jp/news/1409
  • 3) https://www.afsacollaboration.org/cosmetics/
  • 4) ブラジルの例について紹介した記事を示す:https://eleminist.com/article/4252

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