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無料記事7:Veterinary Social Work
〜人間の福祉における動物の位置づけについて考える〜

2019年02月12日 掲載

最近ペットを取り巻く社会事情にも様々な課題が表面化している。

例えば、今の人間社会の大きな問題を反映しているのがペットと飼い主間の「老老介護」である。動物も人間も長生きをするようになり、老いたペットの介護を老いた飼い主が抱え込むようになってきたのである。言うまでもなく、自分の生活活動もままならなくなっている高齢者にとって、介護が必要な動物との生活には多くの困難が生じていく。これは人間の福祉の問題なのか?それとも動物の福祉の問題なのか?答えはおそらく両方である、ということになるだろう。しかし、そうであったとしても、対応するべきは一体誰なのだろう?このような課題に対しては、人間の福祉の専門家も動物の福祉の専門家もなかなか簡単に解決をすることはできないように思える。

さらには、高齢者ではなくとも、最近増えている独居者が病気になったりした場合、もしその人がペットを飼っていたら一体誰がどの様に手を差し伸べれば良いのだろうか?ペットの飼い主がリストラに合い生活が困窮していった場合、ペットを手放すしか選択肢はないのだろうか?それとも誰かが介入するということがあり得るのだろうか?さらには、DV被害者がペットを連れて逃げることができないために暴力を振るわれ続けてしまうということもある。この場合には、ペットを連れて駆け込める保護施設はあるのだろうか?それをどのようにして、誰が被害者に知らせるべきなのだろうか?このような人間社会に発生する様々な問題の中に、ペットが巻き込まれてしまうことは多々あるのである。そして、ペットにかかわるサービスを提供している獣医科病院などで初めてそのような問題が発覚する可能性が高くなっていることがうかがえる。

獣医科病院の顧客が、「リストラされたので診療費が払えない」とスタッフに相談をしてきたら、病院側はどのように対応すれば良いのだろうか?「もう診ることはできません」とはっきり申し渡すことはあまりにも酷な対応であるが、だからと言って無料で診療をすることも現実的ではない。支払いを強要することもできないだろう。また明らかに生活能力が低下している高齢者のペットが栄養失調や不衛生等々のネグレクト状態に陥っていることが診療の現場で発覚したら、獣医科病院のスタッフはどのように対処すべきだろうか?その飼い主が独居者であった場合には、頼れる人もなく本人の生活も危ぶまれるような状況になっているかもしれない。

このような場面以外にも、人間の抱える問題に動物の姿が見え隠れする場面は他にもたくさん考えられる。人間の社会福祉を考える際に、「もしそこに動物がいたら」という側面を無視することは決してできない。時には、もし動物がいなかったら、動物関係者に飼い主が接触することがなかったら、人間自身の大きな問題が見過ごされてしまっていたかもしれないというようなこともあるだろう。改めて、人間の福祉における動物の立ち位置について考えることが求められているのではないだろうか。

このような現状から生まれた概念が、Veterinary social work (VSW)である。この概念は、この10年ほどの間に台頭し始めた新たな分野である。先駆者である米国テネシー州立大学に獣医学部と社会福祉学部の共同大学院ができたのは10数年前であり、その頃から動物を飼育する人間により適切な対応を獣医科の診療の現場は実践していかなければならないという考え方が取り上げられるようになったのである。人間の医療の現場には社会福祉士がいるが、動物の獣医療の現場にも同じような役割を果す者がいる必要がある。人間の福祉の様々な問題には動物が絡んでくることがしばしばある。そのような現場では、人と動物双方の専門家がタッグを組んでいく必要が生じてしまうのである。一般社団法人アニマル・リテラシー総研では、この新たなる試みについて社会が理解を深められるよう様々な情報やリソースを提供していくことを目指し、その一環として、VSWニュースレターを定期的に発行している。
 

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〜人の社会福祉における動物のいちづけ〜
ニュースレター

・Vol. 1「人間の福祉現場における動物の影」、「地域社会に潜んでいる問題」、他
・Vol. 2 「ソーシャルワークと動物」他
・Vol. 3 「災害における動物救護」、「気になる通り魔事件の報道、陰には動物虐待も…」他
・Vol. 4 「メディアと動物」、「米国における動物を介在させた暴力抑止プログラム」他
・Vol. 5 「児童略奪事件の加害者による動物虐待」、「National Link Coalition」他
・Vol. 6「DV 被害者とペット」、「動物虐待専任タスクフォース」他
・Vol. 7「クロスレポーティングとは」、「スポット・アビュース・プロジェクト」他
・Vol. 8 「ペット飼育者の福祉を考える、動物を通して要支援者に手を差し伸べる」他
 

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