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人は何故動物に暴力を振るうのか 〜動物虐待の背景にあるもの〜

2024年3月25日 掲載

目次:
動物虐待は社会問題
支配の手段として使われる動物に対する暴力
動物虐待は学習された行動!?
動物虐待の背景にある諸要素
ケースに合った対応を


動物虐待は社会問題

近年、動物虐待事件が報道で多く取り上げられるなど、動物虐待に対する社会の関心が益々高まりつつあるようである。動物虐待は特に「動物好き」など動物に関心を持っている層の心を痛めている問題というイメージがあるが、当法人で度々発信しているように、動物虐待は対人暴力と連動しているリスクが高く、標的となってしまう動物はもちろんのこと、社会全体の安心・安全を脅かしかねない社会問題なのである。本記事では、この社会問題として捉えるべき動物虐待が何故発生するのか、すなわち人が何故動物を虐待するのかという点について整理したい。
残念ながら、すべての動物虐待の動機や背景を完璧に説明できる理論はまだ解明されておらず、人間が何故動物に対して暴力を振るうのかという問いに対しては、様々な理論が提唱され、多岐にわたる背景要因が指摘されてきた。本記事では、これまでに動物虐待の背景にあるとされてきている状況や動機、そして動物虐待にかかわるとされてきている要素における主だったものを概観することとでする。

 

支配の手段として使われる動物に対する暴力

上述したように、動物虐待は様々な対人暴力と連動する危険性が高いということが科学的な調査研究により示されているが、家庭内暴力と連動する動物虐待の多くに当てはまるのが、動物が家庭内暴力が蔓延する家庭の支配の構図に巻き込まれて暴力を振るわれてしまうというパターンである。家庭内暴力の加害者は、暴力を振るわれていることを被害者が口外しないように、または被害者が家庭から逃げ出さないように、すなわち弱い立場の者を言いなりにするために、様々な形で被害者を支配しようとする。このような中、被害者を支配するために、被害者が大切にしているペットが盾に取られ、ペットに危害を加えると脅されたり、実際にペットに暴力が振るわれるケースが多く見受けられる。実際、DV被害者においては、ペットの身に危険が及ぶことを心配するあまりに被害者がペットを置いて暴力的な家庭から逃げることをためらい、所謂ペットに起因する「逃げ遅れ」が発生しているという実態が複数の研究により浮彫りになっている。1)

 

動物虐待は学習された行動!?

また、「人間は様々な行動を他者が展開させているところを見て、それを手本として行動を学習する」と提唱する社会的学習理論によると、動物虐待も例に漏れず、他者が展開させているところをみて学ぶものだとされている。この理論を当てはめると、暴力に暴露されることが、人が動物を虐待するに至る大きな要因の一つと言えるわけである。実際、動物虐待を目撃するなどの動物虐待への暴露が人間に及ぼし得る悪影響の一つに、そういった状況が暴力を学ぶ機会となってしまうことが挙げられており、動物虐待の目撃が、目撃者による後の動物虐待の展開を予測する要因であることを示唆する科学的な実証研究もある。2), 3)

 

動物虐待の背景にある諸要素

その他様々な要素が、動物虐待という行為に寄与していることが指摘されている。例えば、一般論として、共感は動物虐待に大きくかかわる要素とされている。著しく単純化してしまうと、共感する能力が低いものは、暴力を振るわれる際の動物の痛みがわからず動物を虐待してしまう危険性が高いということである(実際にはこのような単純な方程式ではない可能性が先行研究により示唆されている)。4)さらには、相手に対する自分のコントロール力の評価が子どもや動物の虐待につながる可能性を示唆する研究もある。5)相手を上手にコントロールできていないと自分自身で思っている保護者・飼い主は、子どもや動物に言うことをきかせようとして、暴力的な手段に頼ってしまうリスクがあるということである。また、CU特性(冷淡で無感情な特性, callous unemotional trait)6)や素行障害7)などのメンタルヘルス上の問題と動物虐待が関連付けられていることもあり、ひとえに動物虐待と言っても、その背景には多岐にわたる要素が絡んでいることがうかがえる。
これらに加え、動物虐待の背景には、意外とありふれた要素も見え隠れする。例えば、褒めてしつけをする方法を知らずに、犬に暴力を振るうことで言うことを聞かせようとする飼い主、さらには花壇を荒らす猫たちを迷惑に思い、思い余って捕まえた猫を蹴り飛ばしてしまう人など、知識不足や動物に対するネガティブな個人的経験や感情などが背景にあり、それが動物に対する暴力につながってしまう場合もあるであろう。

 

ケースに合った対応を

このように、動物虐待の「何故」の部分を見ていくと、動物に対する暴力には多岐にわたる要素が絡んでいることがわかる。どのような理由にせよ、動物に対する暴力は決して許されるべきものではなく、暴力の加害者は厳しいペナルティーを受けてしかるべきであろう。しかし、それと同時に、各ケースに寄り添った解決を求める場合、加害者にとって必要な対応がそれぞれ異なることも同時に見えてくる。例えば、加害者のメンタルヘルスの課題や個人の特性などが背景にある動物虐待のケースの場合、カウンセリングや医療的介入などなくして、根本的な解決にはつながらないかもしれない。また、知識不足が背景にあるケースの抜本的な解決を目指す場合は、加害者の教育が必須であろう。罰則は動物に対する暴力の抑止力となると言われており、それ自体は一定の役割を果たすと考えられるが、より徹底した問題解決のためには、それぞれのケースの状況を考えた柔軟な対応が必要であるということである。
動物虐待が人間に対する暴力ともつながっていることが示されている中、動物虐待を社会全体の問題として認識し、より洗練された対応を考えるべき時にきているのかもしれない。
なお、動物虐待の背景にある諸要素に関する詳細を知りたい方は、当法人販売の電子資料(PDF)「動物虐待の背景にある理論や要素 〜人は何故、動物を虐待するのか〜」や、「動物虐待と対人暴力の連動性〜動物に対する暴力と人に対する暴力の表裏一体の関係性を探る〜」も参照してほしい。また、動物虐待への対応における加害者への様々な対応については「LINK の視点から考える、動物虐待への対応システムと課題〜人と動物双方がより健やかに暮らせる社会に向けて〜」もぜひ参照してほしい。


1)Monsalve, S., Ferreira, F. & Garcia, R. (2017). The connection between animal abuse and interpersonal violence: A review from the veterinary perspective. Research in Veterinary Science, 114, 18-26.
2)Hensley, C. & Tallichet, S.E. (2005). Learning to be cruel? Exploring the onset and frequency of animal cruelty. International Journal of Offender Therapy and Comparative Criminology, 49, 37-47.
3)Gullone, E. & Robertson, N. (2008). The relationship between bullying and animal abuse behaviors in adolescents: The importance of witnessing animal abuse. Journal of Applied Developmental Psychology, 29, 371-379.
4)実際の共感という要素と動物虐待の関係性はさらに複雑なもので、共感する能力が低いということと動物を虐待するリスクが単純な二者の関係性にあるものではないことが示唆されている。詳しくは、当法人販売の電子資料(PDF)「動物虐待と対人暴力の連動性〜動物に対する暴力と人に対する暴力の表裏一体の関係性を探る〜」や「動物虐待の背景にある理論や要素 〜人は何故、動物を虐待するのか〜」を参照してほしい。
5)Sims, V.K., Chin, M.G., Eckman, M.L., Enck, B.M. & Abromaitis, S.M. (2001). Caregiver attributions are not just for children: Evidence for generalized low power schemas. Applied Developmental Psychology, 22, 527-541.
6)Dadds, M.R., Whiting, C. & Hawes, D.J. (2006). Associations among cruelty to animals, family conflict, and psychopathic traits in childhood. Journal of Interpersonal Violence, 21, 411-429.
7)Gullone, E. (2003). The proposed benefits of incorporating non-human animals into preventative efforts for conduct disorder. Anthrozoos, 16, 160-174.

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