一般社団法人アニマル・リテラシー総研
  • ALRIについて
  • ENGLISH
  • サービス一覧・料金表
  • お問い合わせ
  • ライブラリー(無料)
  • ライブラリー(有料)

無料記事24:
動物の状態は家庭の指標!?子どもの見守りにおいて「動物」という要素を活かす

2023年5月19日 掲載

目次:
子ども虐待と動物虐待の連動性、子どもの見守りにおける「動物」という指標
ペットは子どもにとって身近で、他者にとっても目につきやすい存在
子どもの福祉と動物の福祉は連動する
動物の状態に注意することで、子どもの危機的状況をいち早く発見するきっかけに


子ども虐待と動物虐待の連動性、子どもの見守りにおける「動物」という指標

当法人で度々発信してきているように、近年は動物虐待と様々な対人暴力が連動して発生するリスクが高いということが数々の調査研究によりわかってきている。これまでの研究によると、動物虐待は殺人などの凶悪犯罪を含む様々な反社会的行動や、家庭内暴力などとつながっていることが示されており、この連動性は英語では「つながり」という言葉を使い「LINK」と呼ばれている。
このようなLINKの現象の例に漏れず、子ども虐待とペットの虐待もまた、同じ家庭で同時に発生する危険性が高いと言われている。このため、海外では子ども家庭福祉当局と動物保護当局が、お互いが管轄する虐待の情報を共有したり、協働体制を敷いたりすることにより、子ども虐待と動物虐待双方の予防や早期発見に取り組んでいる。子ども虐待が発生している家庭において、高確率でペットも暴力を振るわれているということであれば、子どもの様子を確認することができなくても、ペットの虐待を発見することができれば、それがきっかけで子どもの虐待も早期発見できる可能性が高まるということである。また、子ども虐待が発生している環境で等しく動物も危険にさらされているリスクが高いということであれば、動物の状態に注意することにより、その家庭の子どもの養育環境についてある程度推し量ることができるということも言える。すなわち、家庭における「動物」という要素から得られる情報が、家庭環境が呈する子どもに対するリスクを評価する言わば指標の一つとして機能しうるのである。

ペットは子どもにとって身近で、他者にとっても目につきやすい存在

「ペット」という家庭環境を映し出す情報源は、実に身近で、子どもの見守りにおいて活用しやすい。まず、一般家庭の多くが動物と共に暮らしているという点が挙げられる。2019年の「国民生活基礎調査」1)では、子どものいる世帯は約1,100万世帯で全世帯の約2割となっているのに対して、日本のペット飼育率は4割弱と言われている。2)また、子どもの様子がわからない家庭においても、ペットが屋外で飼われていたり、散歩に連れ出されていたり、鳴き声がよく聞こえたり等々、子どもの状態よりも動物のそれのほうが家庭の外部から確認しやすいという点も、動物が家庭の状況を推し量る指標の一つとして活用しやすい点である。実際、海外では動物虐待の方が家庭内暴力よりも近隣住民に通報されやすい傾向が示されており3)、周囲の人間にとっても対人暴力よりも動物虐待のほうが通報のハードルが低いことも考えられる。このような状況を考えると、子どもの状態が懸念されるが直接子ども本人を確認できないなどの場面において、動物をとっかかりに家庭に介入する糸口を模索したり、動物に関する情報に目を配ってそれを家庭の状況を把握するパズルの1ピースとして活用するということが子どもの見守りに役立つ可能性が高いということである。
さらには、ペットは子ども自身にとってもとても身近な存在であることが多い。ペットと暮らしている子どもにとって、動物たちは話し相手や遊び相手、そして時には心を支える存在となる。また、ペットという存在は子どもにとって自分を重ね、時には自分の心情を他者に伝えるための「媒体」ともなる。子どもたちにとって、ペットという話題は親和性が高く、また自らの境遇をペットという題材を通して他者に伝えるということがしばしばあるのである。4)このような子どもと動物の所謂「絆」故に、子どもから直接家庭の状況に関する話を聞くことができる場合、子どもが話す動物の状態が、そのまま子どもが体験していることと連動しているケースが多々あるということが、動物愛護教育などで子どもがいる現場で活動する専門家の体験談として数多く挙がっている。4) 極端な例ではあるが、暴力的な家庭で育っている子どもに自身のペットの猫を題材に絵を描いてもらうと、家族が猫を蹴り飛ばしている姿を描いてきた… という具合である。
加えて、子どもにとって、動物は関心を惹きつけ、かつ話しやすい話題であるために、家庭の状況を探るために子ども本人の生活について聞くよりも、ペットの様子などを聞いたほうが子どもも話しやすいということが考えられるということも、子どもの見守りにおいて動物に関する情報を活用しやすい点の一つであると言えよう。子どもが不自然な怪我をしている様子を心配し、「どうしたの?何かあったの?」と聞きにくい場面では、子ども本人に関する話題に代わって「最近ペットの犬のポチは元気?」と聞いたほうが子どもも答えやすいことが考えられ、またそのポチの様子から家庭で暴力などが発生していることを指し示す情報を得ることもできる場合があるということである。子どもが自身の状況を映し出す存在として関係性を築いていることが多く、かつ話題にしやすい「動物」という要素を活用しない手はない。

子どもの福祉と動物の福祉は連動する

上述したように、LINKの様々な調査研究により子ども虐待と動物虐待が連動していることが示されているが、動物に対する明らかな暴力行為にとどまらず、動物の飼養管理状況が不自然な状態が、子どもの生活や安全が懸念される状況と連動している可能性があることも示唆されているのである。実は、LINKを検討した調査研究を見てみると、ペットの遺棄・行方不明、ペットに適切な食事・水・運動の機会などを与え基本的ニーズに対応していない状態、ペットに適切な獣医療を受けさせない、不適切・不衛生的なペットの飼養環境、ペットの問題行動や、ペットの屋外飼育などの、動物が適切な世話を受けていない状態が子どもの危機的状況と関連していることを示すデータも存在するのである。すなわちペットに対する明らかな暴力行為ではなくても「動物福祉」が担保されていない状態、または動物の福祉の状況が懸念される状態が子どもの安心・安全や生活の質と関連していることも示唆されているのである。5)実際、海外ではこの点に注目して、医療福祉などのヒューマンサービス関係者をターゲットとした、家庭におけるペットの福祉の懸念すべき状態を見分ける知識を身に付けるためのLINKの教材なども公開されている。6)これは、ペットの状態を家庭の全体像を把握するための情報源の一つとして活用できるようにすることを意図したものである。動物の状態を家庭の状況を推し量る指標として活用する場合、動物に対する明らかな暴力行為はもちろん、動物の飼養管理状況が不自然であるかどうかという点に着目することも役立つのである。

動物の状態に注意することで、子どもの危機的状況をいち早く発見するきっかけに

上記で整理したように、子どもにとって、動物は親しみやすく自分自身の状況を投影する鏡のような存在としての役割を果たしうることに加え、子ども虐待と動物虐待、さらには子どもの養育環境と動物の飼養管理状況が連動することから、「動物」という要素に気を配ることで、子ども虐待などの被害にあい、支援を必要としている子どもたちをいち早く発見することにつなげることができるのである。家庭における動物の状況は、その家庭全体の健全さを把握するための情報源の一つであり、パズルの1ピースというわけである。
このような、子どもの見守りにおける「動物」という要素についてさらに詳しく知りたいという方は、ぜひ当法人が販売している電子資料(PDF)「LINKの知識を子どもの見守りに活用する〜子どもの安心・安全における「動物」という要素〜」を参照していただきたい。また、LINKに関する所謂科学的根拠や海外の取り組みなどについて詳しく知りたいという方向けには、電子資料「動物虐待と対人暴力の連動性〜動物に対する暴力と人に対する暴力の表裏一体の関係性を探る〜」も販売しているので、子ども虐待と動物虐待の連動性そのものの科学的根拠などについての詳細は、ぜひそちらも参考にしてほしい。
LINKの知識が実践に活用され、動物も含めた弱い立場の存在すべてが安心・安全に暮らせるより良い社会の実現に活かされることを願うばかりである。

1)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html
2)https://www.gfk.com/ja/insights/dc9669
3)Campbell, A.M. (2022). The intertwined well-being of children and non-human animals: An analysis of animal control reports involving children. Social Sciences, 11, 46. https://doi.org/10.3390/socsci11020046
4)Raphael, P., Colman, L. & Loar, L. (1999). Teaching Compassion: A Guide for Humane Educators, Teachers, and Parents. Alameda, California: The Latham Foundation.
5)山崎佐季子. (2010). 子ども虐待における「動物福祉的アプローチ」の実践的有用性〜子ども虐待と動物福祉の関連性に関する文献的検証に基づく仮説モデル構築〜. ヒトと動物の関係学会誌, 27, 51-59.
6)https://www.virtual-college.co.uk/courses/safeguarding/understanding-animal-welfare

カテゴリーから探す

  • ・ペットとヒトの関係
  • ・動物福祉
  • ・動物介在介入(AAI)
  • ・動物虐待と対人暴力 (LINK)
  • ・【有料】ライブラリー
  • ・【無料】ライブラリー

動物関連トピックス

  • ・イベント・セミナー一覧ページはこちら
  • ・動物関連情報はこちら
  • ・メディア掲載情報はこちら
  • ・電子資料カタログはこちら

コンテンツ

  • ・法人概要
  • ・決算公告
  • ・ALRIについて
  • ・ENGLISH(About ALRI)
  • ・サービス一覧・料金表
  • ・利用規約
  • ・プライバシーポリシー
  • ・特定商取引法に基づく表示
  • ・開示請求等の手続きについて
  • ・購入時にご確認ください。
  youtube

フェイスブック


  • ホーム
  • 法人概要
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー
  • 特定商取引法に基づく表示
  • お問い合わせ

© 2025 一般社団法人アニマル・リテラシー総研 All Rights Reserved.