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7周年目に寄せて 〜社会全体のアニマル・リテラシー、身に付いている?〜

2024年7月25日 掲載

目次:
変り続ける社会における人と動物の関係の認識
「better late than never(遅れても一切やらないよりはまし)」
山積している課題
日本人の人と動物の関係にかかわる認識、本当に変わったのか


変り続ける社会における人と動物の関係の認識

一般社団法人アニマル・リテラシー総研がようやく7周年を迎え、これからも人と動物の関係を社会により明確に理解してもらうために活用していただけるようなサービスを展開し続けられるよう、一層の努力を重ねていく所存である。これも皆さまのご支援があってのこと、今後ともどうか当法人への関心を持ち続けていただきたいと願うばかりである。
さて動物を取り巻く最近の社会事情であるが、どう考えても問題が山積していると感じざるを得ない。動物保護団体らが過去20年程社会に訴え続けてきた三重の上げ馬神事が、ついに恐ろしく高い土塀を取り壊し、馬に無理な障害飛越をやらせることをやめると宣言したようである。しかし、今までに動物保護団体関係者が神事を見に行った際にも、命を落とした馬はいたと聞く。社会がそれをなかなか認識してくれなかったのである。そこに、ここ数年コロナで中止されていた祭りが再開された時に起こった馬の死は、社会の大きな反感を買ってしまったようである。やはりこれは、一般の方々の動物に対する意識が変わってきたことの反映であるとしか考えようがない。
また、大谷選手が自分の愛犬と映った場面が放映された際には「かわいい!」、「欲しい!」というような人々がいなかったわけではないが、多くの専門家の「自分は繁殖をしていても気軽に連絡をしてくる者に売ることなどしない!」という投稿や、その犬種の遺伝性疾患の情報もたくさんSNS上で見ることができた。

 

「better late than never(遅れても一切やらないよりはまし)」

さらに、最近の動向としては、ようやく補助犬の訓練は動物福祉の基準を守らなければならないという宣言1)を国際盲導犬連盟 (International Guide Dog Federation, IGDF)とアシスタンス・ドッグス・インターナショナル(Assistance Dogs International, ADI)が共同で発表している。犬のトレーナーのためのそういった基準については、そのだいぶ前の2001年に人と動物の関係に関する国際組織(International Association of Human-Animal Interaction Organizations, IAHAIO)リオ大会でペットパートナーズ(旧デルタ協会)が基準をまとめた本の発表を行っている。2)この本の日本語版はD.I.N.G.Oが出しているが、原本の作成委員会の中にはテリー・ライアンを含めスザンヌ・ヘッツ、パム・リード、トリッシュ・キングなど犬の行動学やトレーニングの大御所が名を連ねており、中身が極めてしっかりとした本に仕上がっている。この本の副題は「効果的かつ人道的原理」であるが、そこから20年以上経ってようやく補助犬の関係者が出した宣言の中には、効果的であり人道的な訓練が謳われているのである。しかし考えてみれば、「better late than never(遅れても一切やらないよりはまし)」ということなのであろう!

 

山積している課題

今我が国では動物愛護法の改正の時期を迎えているが、ここにも様々な課題が残されているようである。最近、環境省が発信した犬や猫の8週齢規制の年齢詐称問題3)もその一つである。しかし、これは購入者がより賢くならなければ解決しない問題である。環境省が犬を購入する際の注意事項として、購入希望者は親犬や繁殖された場所などを見せてもらうことを要求するべきであるなどと発信すれば解決の助けになるのではないだろうか。また、一般社団法人ジャパン・ケンネル・クラブ(JKC)が血統書を発行するにあたり、生年月日に偽りがないかを調べるシステムを作る必要もある。例えば、出産の現場には必ずJKCまたは環境省の指定獣医師が立ち会うことを義務付けるようにするなどということも、考えられる。お金も時間もかかることではある。
また、こういった対策を講じても「ズル」をする関係者が出てくるかもしれない。20数年前、身体障害者補助犬法の成立で第三者認定が聴導犬と介助犬に義務付けられたのである。訓練終了後、厚生労働省の指定法人に出向き聴導犬と介助犬は使用者と共に認定試験を受けなければならないとなったのである。4)しかし、育成団体の中には、自分たちで別法人を立ち上げ訓練団体が輩出した犬を事実上自分たちで認定するような仕組みを作ってしまった人々もいたのである。だが、悲しからずやこのようなことはどこにおいても必ず起こることであると言わざるを得ない。月齢詐称を食い止めるために出生の保証をする専門家を認定するシステムを構築したとしても、それが必ずうまくいくとは限らないということである。
最近少し苛立ちを感じているのが、日本でなかなか動物虐待と対人暴力の連動性「LINK」の概念が広まらないということである。一部の方々の「食いつき」は良いが、暴力の連鎖に関する社会的意識が今一つ盛り上がらないと感じている。この課題は人と動物の関係において最も社会的には重要であると思うが故に、何故人々の関心がそこに向かないのか不思議に感じるのである。当法人ではおそらくこの分野の新しい情報をほぼ独占していると言っても決して過言ではなく、この分野に対する関心が日々高まっていく欧米における最新の法制度や社会支援などに関する情報を提供し続けている。これこそがワンウェルフェア(One Welfare)、すなわち人と動物の福祉は一つであるという概念と最も合致する課題であろう。子ども虐待、ドメスティック・バイオレンスや、高齢者虐待などはいずれも現代社会の歪みを映し出している闇の部分であろう。その中に動物虐待も絡んでいる事例も多く、動物を救おうとする人々と人間を救おうとしている人々が監視の目を一つにすることができれば、人も動物もよりたくさん救うことができる、という当たり前の発想がなかなか定着しないのは疑問に感じることがある。また、いじめや暴力行為、そしてその他の反社会的行動を展開させる者たちは、多くの場合動物に対しても非常識な扱いを展開させている可能性が高い。そう考えれば、動物に対する暴力行為に目を光らせていることが、その他の犯罪抑止につながる可能性もある。これは決して「動物を守る」という視点だけで捉えてはならぬ問題であり、動物好きの者たちだけにゆだねられるべき課題ではない。そして何故、社会にとってもこのように重要な意味を持つ課題が無視され続けているのかが理解しがたいことなのである。既に7年間この課題に対して情報を発信してきた当法人としては、次の7年間でもう少しこの点に関する社会の教育に貢献していきたいと考えている。
振り返ってみると、我々と生活を共にする伴侶動物に関する一般的な考え方はかなり変化をし続けていると感じるところもあるが、動物全体に対する根本的なリスペクトはまだまだ発展の余地ありと感じざるを得ない。もう少し適切な情報に基づいた行動を、人間は動物に対して展開できぬものであろうか。

 

日本人の人と動物の関係にかかわる認識、本当に変わったのか

この7年間で最も落胆したのが、新型コロナウイルス感染症の蔓延と人と動物のつながりに対する我が国の対応である。野生獣との不適切なかかわりがそもそもその発症の根底にあることは、世界的にも報道されていた原因の最有力説である。海外の有力紙などの報道には、当時しばしば野生動物とのかかわり方の課題などが取り上げられていた。しかし、国内ではその事実を全面的に社会問題として押し出した報道は全くなかったのである。国内で問題となりつつある無秩序な野生動物の一般飼育や、それを支える密猟・密輸などの違法行為を一網打尽にする最大のチャンスを当局は失ったと言っても決して過言ではない。それどころか、あるテレビ番組においては、「新型コロナウイルスが流行し中国が野生獣を高値で買い漁らなくなったおかげで、日本にもレアな獣が入るようになった」などと豪語する業者を取り上げていたところをみたことがある。日本は、後にも先にも野生動物のペット化問題に歯止めをかける最大のチャンスを逃したのである。
前述したワンウェルフェアより先に世界で取り上げられていたのは、「ワンヘルス(One Health, 健康は一つ)」という概念であり、人の健康は動物のそれと密接につながっているという考え方である。新型コロナウイルスでまさにそれが具現化された。にもかかわらず、依然として野生種をペットとして飼育する人々はたくさんいるのである。そういった者たちは、リスクを考えていないのであろうか。いや、リスクがあることさえ知らないのである。これが適切な情報に基づいた行動を動物に対して展開させることができない日本国民の姿である。それを変えるのは誰だろうか。そして、誰がその責任を負うべきであろうか。少なくとも人と動物の関係をこれからも見つめ様々なサービス提供を続けようと考えている当法人は、その責任の一部でも果たすことができたら幸いであると考えている。


1)https://assistancedogsinternational.org/clientuploads/Resource_Center/ADI_IGDF_Joint_Dog_Health_&_Welfare_Statement/ADI_IGDF_Joint_Board_Statement_-_Dog_Health_&_Welfare_FINAL_7.5.2023.pdf
2)Hetts, S. (2004). ドッグトレーナーのためのプロフェッショナル基準: 効果的かつ人道的原理. <鶴田知佳子, 鶴田彬, 石綿美香訳>. 横浜: DORG D.I.N.G.O. Div
3)https://www.env.go.jp/press/press_02760.html
4)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414AC1000000049_20210901_503AC0000000036

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