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動物愛護教育:動物に「やさしく」することを伝える教育は、動物を用いなくてもできる!?

2021年9月16日 掲載

目次:
1:動物に「やさしく」、社会啓発の機運を盛り上げるための動物愛護週間
2:動物愛護教育・生命尊重教育、そして動物介在教育 ― その違いとは?
3:動物を導入する動物愛護教育・生命尊重教育は、動物にとって「やさしくない」場合も…


1:動物に「やさしく」、社会啓発の機運を盛り上げるための動物愛護週間


9月は動物愛護週間があるが、動物愛護週間と言えば「国民の間に広く動物の愛護と適正な飼養についての理解と関心を深め」1)ることを目的として設けられた週間である。

そう、まさに一般社会に動物に「やさしく」し、生命を尊重することを伝える、「動物愛護教育・生命尊重教育」的な啓発活動を盛り上げるための週間なのである。

しかし、この動物に「やさしく」することを伝える教育は、動物を用いなくても様々な方法で質の良い取り組みを実施することができることをご存じだろうか。今回の記事では、動物を用いない「動物愛護教育・生命尊重教育」について解説したい。
 
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2:動物愛護教育・生命尊重教育、そして動物介在教育 ― その違いとは?


「動物愛護教育・生命尊重教育」と言えば、動物を連れて、教育機関などで実施されている所謂「触れ合い活動」をイメージする方が多いのではないだろうか。一般的には、動物愛護教育・生命尊重教育イコール動物と触れ合い、命の大切さや動物への思いやりを学ぶための教育という方程式ができあがっているようであるが、まず、動物愛護教育・生命尊重教育が何を指すか、改めて整理したい。

まず、教育上の目標を掲げ、生身の動物を導入する取り組み全般のことを、「動物介在教育(Animal Assisted Education, AAE)」と言う。動物介在教育の教育目標は、何も生命尊重や、動物への思いやりの醸成でなくても良いのである。例えば、海外、そして最近は日本でも実施されている、子どもの音読技術の向上を目的とした犬への読み聞かせプログラムなどが挙げられる。このような犬を介在させた音読教育の目的は、犬との触れ合いで癒やされることでも、犬を通して命の大切さを学ぶことでもない。あくまでも、子どもの音読スキルの向上なのである。犬を読み聞かせの相手として選ぶことにより、子どもの音読技術を批評しない相手に対して、子どもがリラックスして音読の練習ができるということなのである。

もちろん、AAEの中には、命の大切さや動物に対する思いやりの醸成を教育目標として掲げるものもあるが、AAEイコール必ずこのような目標を掲げているものではないという点を理解しなければならない。

一方、動物愛護教育・生命尊重教育は、文字通り、命の大切さや動物に対する思いやりの醸成を目的として掲げた教育活動である。そして、理想的には、その先にあるべき姿は、人間が本来持って生まれたはずの周囲の環境や自然に対する感受性を失わせないようにするための教育なのである(動物愛護教育・生命尊重教育の意義については、こちらの無料記事も参照してほしい)。ここでのポイントは、動物愛護教育・生命尊重教育において、必ずしも生身の動物を導入しなければならないという決まりはないということである。

動物愛護教育・生命尊重教育は、ゲーム、ロールプレイング、討論、図書や動画などの視覚教材等々、様々な方法を活用して実施することができるのである。例えば、多くの動物保護団体は、生身の動物を導入しない動物愛護教育・生命尊重教育の方法として、動物の命について考えるゲームを考案している。英国王立動物虐待防止協会(Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals, RSPCA)では、以前「ゴミ袋ゲーム」というものを実施していた。中が透けて見えない黒いゴミ袋に洗浄済みの使い捨て容器、空き瓶や空き缶などの廃棄物を入れて、子ども一人ずつに中に入っているものを選ばせ、子どもたちに選んだ物が、道ばた、森林や、水辺などに捨てられていた場合、どのような動物にとってそれが危険になりうるかについて、それぞれの考えを披露させるというゲームである。ゴミのポイ捨てが、いかに動物たちの命を危険にさらすことにつながるか、考えさせるきっかけを作るというわけである。このような動物を使わない動物愛護教育・生命尊重教育の取り組みや教材などの事例については、当法人販売の電子資料「動物介在教育(AAE)と生命尊重教育の基本 〜保護者、教職員、そしてすべての大人たちへ〜」を参照してほしい。
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3:動物を導入する動物愛護教育・生命尊重教育は、動物にとって「やさしくない」場合も…


注意しなければならないのは、生身の動物を導入する動物愛護教育・生命尊重教育が、場合によっては動物にとっては全く「やさしくない」こともあるという点である。

たくさんの子どもたちが動物を囲い動物にストレスがかかるような場面、動物が疲れてしまうような長時間のプログラム、人間との接触を心から楽しむことができないような臆病な性格の個体を使ったプログラム等々… 目を凝らしてみてみると、このようなプログラムが散見されるという印象を受ける。また、本来人間との密な接触が不自然である野生種を起用したプログラムなども度々見受けられる。さらには、動物愛護教育・生命尊重教育を謳って動物を飼養している教育機関もあるが、果たして、動物たちは適切な飼養管理下に置かれているのだろうか。

もちろん、適切なリスク管理と参加動物の適性審査を実施しているプログラムや、徹底した飼養管理体制を取っている教育機関もあるわけであるが、残念ながら、そうではないプログラム・教育機関も存在するのである。ストレスのかかった動物を見せること、本来自然界では人間との密な接触がない状態で生活しているはずの野生種を持ち込んで「不自然な姿」を見せること、そして校庭の片隅に忘れ去られてしまった世話の行き届いていないウサギたちを見せること… これらは他の生命を慈しみ、思いやる心を子どもたちに養わせることにつながるのであろうか。教育現場の専門家たちには、ぜひこの点を今一度考えてみてほしい。

また、アニマルセラピーのような、動物を介在させる取り組みであればどのようなものにも当てはまるが、動物が安心して、心から人間との接触を楽しんでいる状態でないと、参加者にむしろ悪影響を与えかねないという点についても言及しておきたい。以前の無料記事でも解説した通り、動物の癒し効果の根底には、太古から我々人間が動物を環境のバロメーターとして捉えているという点がある。人間たちは、自分たちが過ごす環境で動物が逃げ惑っていたり、緊張していたりすると、それを自らにも危険が迫っているシグナルとして受け取り、また動物たちがリラックスしてくつろいでいる姿を、その環境に危険がなく、安心できるという合図として読み取っていたのである。すなわち、動物が安心している姿は人間に癒しをもたらし、逆にあまり良い状態にない動物の姿は、無意識なレベルにおいて人間に不安をかき立てる可能性すらあるのである。動物に「やさしくない」プログラムは、子どもたちに命の大切さや思いやりを教えるどころか、悪影響を与えることさえ懸念されるのである。このような点を含め、動物を介在させるプログラム全般におけるリスク管理などについては、当法人販売の電子資料「動物介在介入(AAI)の基礎知識 〜失敗しない活動のために〜」を参照してほしい。

これらの点を総合して考えてみると、十分なリスク管理ができない、適性のある動物を調達できない等々、プログラム設計上、動物に「やさしくない」要素を排除できないが動物愛護教育・生命尊重教育を実践したいという場合、生身の動物を導入することに固執せずに、先に挙げたような動物を使わない方法の選択を視野に入れるべきではないだろうか。動物のためにも、子どものためにも、である。

 
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1)  https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/week.html 

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