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無料記事36:動物介在介入の効果の検討 〜「癒し」だけではない「アニマルセラピー」の目標〜

2025年8月19日 掲載

目次:
動物介在介入、「癒し」という漠然とした目標以外には…
「バリエーション」が鍵となる
人間側の関係者と動物側の関係者のチームプレイで動物介在介入をより洗練されたものに


動物介在介入、「癒し」という漠然とした目標以外には…

最近再び動物介在療法(animal assisted therapy, AAT)や動物介在活動(animal assisted activity, AAA)など、所謂「アニマルセラピー」と言われている活動が注目されているような印象を受ける。ネット上では「ドッグセラピスト養成」など、講座の内容を疑問視してしまうような広告を度々目にする。また、アニマルセラピー関連の講座そのものも、益々頻繁に見かけるようになってきた印象を受ける。しかし、1980年代から注目を集めはじめたこの分野がなかなか発展しない大きな理由の一つは、実践における様々な手法に関する情報提供をするような教育がなされてこなかったからではないかと考える。癒しを与えるという簡単な言葉、さらには安心感、楽しさ、気分転換等々、様々な言葉で動物介在介入(animal assisted intervention, AAI, 近年は動物介在サービス(animal assisted services, AAS)と呼ばれることもある)の効能が語られてきた。しかし、医療や教育などの現場における目標設定に本当に合わせた対象者と動物のかかわり方の詳細はどこを参照しても、あまり多くの情報を見つけることができないというのが現状なのではないだろうか。そこで、様々なゴールを達成するために、動物を訪問対象者とどのようにかかわらせることができるのかについて、今までの経験をもとに整理してみた。
単純に触れ合いを目的としているのであれば、安全配慮や動物への正しい接し方等々の指導をすれば十分であろう。しかし、それであっても正しい指示が出されていないケースが多々あるように思える。各地にある所謂「ふれあい広場」的な場所においては、そもそもそのような役割を果たすべき人員を配置していない場合が多いことには常に驚かされる。しかし、特に動物介在療法や動物介在教育など特定の目標を掲げて展開される動物との触れ合いについては、動物を介在させながら人間側の抱える課題にいかに効果的な影響を与えることができるかについて考える必要がある。


 

「バリエーション」が鍵となる


こういった目標別の動物介在介入の効果について考えた時、「バリエーション」を付けるということが鍵となる。これは、動物とのかかわり方の一つにいかにたくさんのバリエーションがあり得るかということを考えるということである。例えば、しばしば犬を参加させた動物介在介入では、ボール投げなどの「持来」行動を活用することがある。単純に言えば、対象者にボールを投げてもらい、犬がそれを持ってくるという遊びである。しかし、この単純な遊びにも数え切れぬほどのバリエーションがある。まずは、投げる物に関してはボールだけでも色、大きさ、重さ、硬さ等々、様々な選択肢があり、それを事前に対象者の体力、握力、治療目標、好みなどに合わせて選択しておくべきなのである。
また、ボール以外にも他の形状のものを投げることもできる。犬にとっては「持来」はいつもボールでやるとは限らない。その他の玩具や物品などを投げて取ってきてもらうこともできるということである。さらに、投げる距離は単純に対象者の能力によって決まってしまうだけのものではない。例えば、特定の目標をマットやコーンなどで決め、それをめがけて投げてもらうというコントロールの練習として「持来」を活用することができるのである。投げる側、すなわち対象者にもこのバリエーションの概念を当てはめることができる。まっすぐ正面に投げる、後ろを向いて投げる、横向きで投げる、右手左手どちらかを重点的に使う等々、投げ方を治療目標に合わせて考えていくのである。
このように単純なかかわり方を、目標に合わせて様々な形に変化させることができるという概念を、より多くの場面に当てはめて考えていけば良いのである。そのためには、言うまでもなく、動物のハンドラー(動物を連れて訪問するボランティアなど、その動物の飼い主である場合が多い)の想像力や発想の豊かさが必須であることはおわかりいただけると思う。それだけではなく、動物種によってどのようなかかわり方ができるか、どのような遊びをその種が展開するのか、どのような玩具や道具を用いることができるか等々を、ハンドラーが徹底的に把握していなければならない。最近の「アニマルセラピー講座」では一体どの程度このような情報が提供されているのであろうか?また、ハンドラーの発想力を育てるような工夫はされているのだろうか?甚だ疑問に思わざるを得ない。


 

人間側の関係者と動物側の関係者のチームプレイで動物介在介入をより洗練されたものに

動物を医療、福祉や、教育などの現場に導入し、その成果をはっきりと出していくためには、動物介在介入の活用方法をより細かく考えていく必要がある。何度も言うようであるが、癒しや安心などのふわふわとした言葉で形容することはしばし置いておいて、より具体的に何ができるかについて考えていく必要があるということである。そのためには、動物と人はどのようにかかわることができるか、人は動物と共にどのような動きをすることができるか、どのような工夫をすれば動物の存在が人の行動を誘発できるのか、そして既存の医療や教育などの手法に動物を組み込んでいくことはできるのかというような点を検討し続けることが大切なのである。そして、上記のような情報を人間側の専門家に伝えていくことをしなければならない。
人間側の専門家がハンドラーになれば良いというような考え方もあるようである。これを否定することはしないが、ヒューマンサービスの専門家たちの中にどれだけ動物とのかかわり方のバリエーションを考えられるだけの経験を持った者がいるのだろうか?次々と発売されていく動物関連の商品、犬具、動物種別のおやつや玩具等々の知識を豊富に持った人間側の専門家はどのくらいいるのだろうか?決して人間側の専門職を疑っているわけでもなければ、知識がないと言っているわけでもないが、動物を伴って訪問を繰り返しているハンドラーたちは、本当の動物目線で様々なことを考えることができる人たちであるということを忘れてはならない。また、彼らは一般の飼い主であっても、日常の飼養管理や自分の動物とのかかわり方は他者と比べたらワンランク上であることは言うまでもない。日常的に自分の動物家族のあらゆる側面を見ている人たちなのである。このような人たちが提供できる動物関連情報と人間側の専門家が提供する訪問対象者たちの状態やゴールに関する情報を合わせていけば、最良の結果を出すことができる動物介在プログラムの計画を練っていくことができるのではないだろうか。こういった人間側と動物側の関係者のチームプレイこそが、動物介在介入の分野をより発展させるための鍵となるのではないかと考える。
当法人では、「動物介在介入の効果と手法〜『アニマルセラピー』の目標を達成するための触れ合い方〜」と題した、このような対象者の目標に沿った動物介在介入の効果を達成するためにはどのようなかかわり方が考えられるかについて整理した電子資料(PDF)を販売している。この電子資料には、あらゆるゴールを想定した動物とのかかわり方のアイデアを詰め込んでいる。前述したボール投げでもおわかりのように、キーワードは「バリエーション」である。単純な遊びにも幾通りものバリエーションを付けることができる。また、動物とのかかわりにゲーム的要素を加えたりして、楽しさを倍増させるようなアイデアなども整理している。用いることができる道具やおやつなどの提案もしている。今までの動物介在介入を、対象者の治療や教育の目標に沿って、より効果的なもの、より楽しいもの、そしてよりプロフェッショナルなものへと変化させていくための資料として活用していただければ幸いである。
動物介在プログラムは様々な既存の医療や教育などの手法に組み込むことができるという考え方が、この分野の発展には極めて大切なことである。上記の電子資料は、この概念をいかに具現化していくかについて考えながら執筆されたものである。今まで訪問活動を展開してこられた方々も、これから何かを始めてみたいと考えておられる方々も、ぜひその内容を把握しながら有効に活用していっていただければと願っている。

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