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知っていますか、音読教育を支援する犬たち
2023年1月11日 掲載
目次:
犬による児童の音読支援、その発祥
犬による音読支援とは?
犬による音読支援、求められる適性は?
犬による児童の音読支援、その発祥
米国発祥の動物介在教育プログラムの一つである、犬による児童の音読支援が注目を浴びている。このプログラムを創設したのは、米国ユタ州で活動をしている動物介在介入のボランティア団体Intermountain Therapy Animalsである。
1)
この団体は1999年にR.E.A.D. Program という名称でこのような活動を開始した。このネーミングはReading Education Assistance Dogsの頭文字をとったものであり、日本語にすれば「読書教育支援犬・音読教育支援犬」と訳すことができる。このプログラム内容を音読補助犬という言葉で紹介した国内の記事を目にしたこともあるが、我が国では補助犬という言葉は身体障害者補助犬法という正式な国の法律に用いられている用語のために、誤解を招く恐れもあり、その使用は避けるべきだろう。また、R.E.A.D.という名称は前述したIntermountain Therapy Animals の登録商標となっているので、他の団体が勝手に用いることはできない。
犬による音読支援とは?
この動物介在教育では、基本的に音読が苦手な児童に犬をオーディエンスとして読む練習をさせるのである。吃音、学習速度の問題等々のために教室での音読能力がなかなか上達しない児童、英語を母国語としない児童や、人前で声を出すことが苦手な児童などに、別途学習の機会を与えるために考えられたものである。特に重要なのは、読むのが苦手な子どもたちに、いかにストレスやプレッシャーをかけずに練習できる場を与えるかという点であろう。人間のチューターを前にして一対一での補修をさせたり、宿題として家で保護者と一緒に練習するよう促すことは、往々にして子どもを緊張させたり、追い込んでしまったりする可能性もあり得策であるとは言えぬ。その点、練習相手が犬であれば、途中で間違った読み方をしたり、言葉に詰まったりしても注意されたりする恐れを子どもが感じることもなく、安心して声を出すことができるのである。この犬を相手にした音読の練習は、瞬く間に全米に広がりその有用性が語られるようになった。特に米国特有の状況とも考えられる、成人人口の文盲率の高さが非常に問題視されるようになり、児童教育の中で識字能力の確認が重要視される中、このユニークな試みが注目を浴びるようになっていったのであろう。子どもたちに対して文字を読むことを推奨するために1997年に開始された全国読書キャンペーンである「America Reads」は、米国の小学4年生の児童の40%の識字能力が年齢水準を下回っていると発表している。
2)
このような状況下で、効果的な音読支援プログラムの必要性が高まっていったのである。
何故犬を参加させるのかという点に関しては、犬好きの方々はおそらく痛感しているであろう犬という動物の基本的な社会性が大きな要因の一つであろう。他の愛玩動物たちと比べると犬は社会集団を形成し、その中の関係性を重要視する動物であるという性質が強く、猟犬や牧羊犬などで見受けられるように、人間との協働が得意な生き物である。そのために、「話しかけられる」ということに対する反応が極めてポジティブである個体も多いようである。つまり、熱心に読み聞かせをしてくれる児童に対しては、恰好のオーディエンスになると考えられたのである。
犬による音読支援、求められる適性は?
では、犬を用いるということはどのようなことなのだろうか?単純に言えば、静かに子どもに寄り添って聴くということだけが求められるのであるが、やはりそう簡単なことではない。まず必要なのは「活動適性」である。「
うちの愛犬、アニマルセラピーに参加できる?〜動物介在介入(AAI)参加動物の評価のための指針〜
」には動物介在介入に参加させる動物の適性をどのように評価するべきかなどの情報が記載されている。様々な活動の内容によって求められる適性は少しずつ異なるとはいうものの、基本的な適性、つまり性格的要素の基本は共通している。それに加え、活性度がそれほど高くなく、一定の時間無理なく落ち着いていられることが好ましいと言えよう。しかし、活動は犬にお任せというわけにはいかない。ハンドラー、すなわち犬を連れていくボランティア(飼い主)も気をつけなければならないことがたくさんあるのである。「
まずハンドラーから選ぶ〜動物介在プログラムに参加するボランティアの評価方法〜
」では、総合的なハンドラー適性に関する情報が記載されているが、さらに音読支援の現場で気をつけなければならないこともある。特に読み聞かせをしている子どもがわからない文字に遭遇した際の対応が重要視されているのである。大人(ハンドラー)がすぐにそれを教えるような発言をしてしまうと、子どもは再び「教えられている、評価されている」という気持ちになってしまうのである。そのような時にはどのような対応が望ましいかなどを含め、ハンドラーの事前教育も実施しなければならないということである。
このような犬を読み聞かせの対象とするプログラムには、実は二通りの目標がある。それは、1.特定の児童が抱えている音読の課題に対する直接的な支援をすること、言い換えれば動物介在療法的な目標、そして2.子どもたちの本離れを防ぎ、皆に読むことの楽しさを実感してもらうために多くの児童が自由に参加できる場所を設ける、言い換えれば動物介在活動的な目標である。前者では、教育の専門家が対象児童や用いる教材等々を決めるなどの枠組の中で実践される。後者は、図書館や児童書を販売する書店などで展開されている。また、学校でも図書室を用いてクラスの児童が全員順番で参加できるようなやり方も実施されている。特にこの動物介在活動型の読み聞かせプログラムでは、教育の専門家からの指導などはなく、子どもたちが自分で自由に本を選び、現場によっては複数の参加犬の中から読み聞かせの相手を自由に選んだりすることもある。
子ども自身が本を読めない場合には、犬とくつろぎながら大人に本を読んでもらうというやり方もある。特にまだ文字を読めない幼児に対しては、読み聞かせの現場で犬と共に「一緒に聴く」という状況を作り出すことによって集中力が高まり、より落ち着いてお話を聞くことができると言われている。
動物を介在させ人間の心や身体に様々な恩恵を届ける
動物介在介入
の中でも、この音読支援プログラムはユニークであると共に、犬という動物の特性を極めて効果的に活用するものであることは間違いない。しかし、一見単純に見えるこの試みを実践するためには様々な準備が必要であることは言うまでもない。どのようなことを事前に考えておかなければならないかについて熟知することから始めなければならないというわけである。この度は当法人でこのような情報を「
子どもによる犬への読み聞かせの実践の指針〜犬を導入した音読支援プログラムの あり方について考える〜
」という電子資料としてお届けすることになり、より多くの方々に有益な情報がいきわたることを願っている。
1)
https://therapyanimals.org/read-team-steps/
2)
Intermountain Therapy Animals. (2005). Reading Education Assistance Dogs®. Salt Lake City, Utah: Intermountain Therapy Animals.
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