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無料記事39:LINKの知識を実践に活用する? - 動物虐待の加害者への対応にLINKの視点を活用する

2026年2月20日 掲載

目次:
動物虐待への対応、加害者を罰し、動物を救出するだけではない
動物虐待の加害者の教育や治療
動物と人双方を加害者から守る施策
広い視野で、人と動物を守る


動物虐待への対応、加害者を罰し、動物を救出するだけではない

動物虐待への対応というと、加害者に罰金刑や懲役刑などを科して罰を与え、被害にあった動物の救済にあたるという取り組みを想起する者が多いのではないだろうか。確かに、動物虐待に対する「抑止力」として加害者に十分な罰を与え、かつ被害動物を手厚く保護することはとても重要な対応であるが、動物虐待への対応はこれだけではない。動物虐待が発生する背景に迫った動物虐待と対人暴力の連動性「LINK」に関する研究をみていくと、動物虐待の言わば「原因」となる要素や、人が動物に暴力を振るうに至る理由は様々であることを理解することができる。動物虐待の加害者により、その虐待に至る背景が多岐にわたるということは、その動物虐待のケースを根本から解決するためには、当該加害者が抱える要因を解消できるような対応が必要であることがうかがえる。また、動物虐待のケースによってはLINKの考え方が示すように、対人暴力と連動しているリスクも高いということを念頭に置いておくことも求められる。各動物虐待の加害者に適切な対策を講じて一つ一つの動物虐待のケースの根本的な解決を目指し、かつ人と動物双方を守るに至る包括的な取り組みを展開させるためには、幅広い選択肢が用意された動物虐待の加害者への対応が必須と言えよう。本記事では、このような動物虐待の加害者への対応について概観することとする。


 

動物虐待の加害者の教育や治療


LINKの調査研究が示すように、動物虐待に至る背景要因は多岐にわたる。ということは、動物虐待のケースにはそれぞれ異なる「原因」があるということが考えられる。例えば、過去の無料記事でも触れたように、動物虐待のケースによっては、加害者が動物の適切な扱い方を知らない、褒めてしつける方法を知らず暴力により言うことを聞かせようとした等々、加害者の知識不足が背景にあるケースも考えられるのである。こういった加害者の知識や認識の不十分さにより発生してしまうケースにおいては、適切な「懲罰」に加え、加害者の無知や認識不足を解消することが根本的な解決となり、将来の動物虐待も予防し得る対応となると言えよう。
海外では、このような加害者を対象とした教育プログラムなどが、対応の選択肢として提供されていることもしばしばある。 例えば、アメリカにおいては、司法(裁判所など)、メンタルヘルス、教育機関等々が、動物虐待の加害者をリファーラルすることができる、動物虐待の加害者専用の教育プログラムが数多く運営されている。1)
また、LINKの研究の中には、動物虐待の背景要因としてメンタルヘルス上の課題を挙げるものもある。例えば、動物に対する攻撃性は精神疾患の診断・統計マニュアル (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DSM)において素行症・素行障害の診断基準の一項目として含まれており2)、実際子どもにおける動物に対する攻撃性は素行症・素行障害を早期発見するための兆候として注目されている。3)このような、メンタルヘルス上の課題が背景にある動物に対する暴力は、しかるべき専門家の治療的介入が問題を根本から解決するカギとなるであろう。
こういった治療的介入に関して付け加えると、多くのアメリカの州においては動物虐待の加害者に対してカウンセリングなどを受けるよう裁判所が命令を出すことができるようになっており4)、治療的なアプローチも動物虐待の加害者の対応の中では一定の役割を果たしていることがうかがえる。


 

動物と人双方を加害者から守る施策

上述した加害者に対する介入以外にも、海外においては長期的に人と動物双方を暴力から守ることにつながり得る様々な施策が加害者対応として展開されている。例えば、家庭内暴力の被害者を加害者から守る(接近、連絡等々を禁止する)保護命令(protection order)にペットを含むペット保護命令(pet protection order, PPO)を裁判所が下せるようになっているアメリカの州は複数存在する。無料記事でも言及しているように、ドメスティック・バイオレンス(DV)と動物虐待は同じ家庭で発生しているリスクが高いことが示されており、DV加害者の暴力の矛先が自分のペットにも向かうことを恐れて、DV被害者が家庭から逃げ遅れるケースが多発していることが複数の調査により示唆されている。5)このような中、ペット保護命令は、加害者の暴力の矛先からペットを守るための対応として機能しているのである。
また、欧米の自治体によっては、動物虐待加害者の登録制度 (animal abuse registry)を設けているところもある。動物虐待加害者の登録制度とは、動物虐待の加害者の情報検索システム上に加害者情報を登録し、その情報を加害者の動物虐待の再犯などに役立てようという対策である。こういった登録制度についてはコストや加害者情報の悪用などを含め、期待される効果に対して様々な課題も指摘されているが、LINKの観点からは、今後どのような特性・属性の動物虐待加害者がその暴力の矛先を人間に向ける危険性が高いかという点について研究が進めば、動物虐待の再犯に加えて、その動物虐待に紐づく危険性がある対人暴力やその他の犯罪を未然に防ぐことに貢献できるデータを収集する手段となる可能性もある。


 

広い視野で、人と動物を守る

本記事で概観してきたように、動物虐待の加害者対応は、動物に暴力を振るった者を罰するだけではない。動物への暴力を容認しないという強い姿勢を社会全体が見せるという観点からは抑止力として懲罰的な対応を求めることも大切であるが、動物虐待の根本的な解決を模索する場合、より広い視点で捉え、そのケースが発生した背景要因に目を向け、その状況にあった対応が必要となろう。また、LINKの視点から考えると、動物虐待は加害者と被害動物で完結するものではない。動物虐待は対人暴力とつながっている危険性が高く、そこにはその動物虐待からさらに暴力の連鎖が他者に広がるリスクが秘められている。こういったLINKの観点からも、人と動物双方を守ることにつながるより包括的な動物虐待への加害者対応が求められる。
なお、LINKについてより詳細かつ専門的な知識を身に付けたいという読者は、当法人の電子資料(PDF)「動物虐待と対人暴力の連動性〜動物に対する暴力と人に対する暴力の表裏一体の関係性を探る〜」も参考にしてほしい。また、動物虐待対応におけるLINKの知識の活用などについては、同じく当法人の電子資料(PDF)「LINK の視点から考える、動物虐待への対応システムと課題〜人と動物双方がより健やかに暮らせる社会に向けて〜」において整理している。そして、動物虐待への加害者対応について詳細な知識を簡潔な形で身に付けたいという方は、当法人の動物虐待の加害者への対応に関するファクトシートをご活用いただきたい。LINKの知見が、動物虐待の被害動物やその動物虐待と連動する対人暴力の被害者の救済はもちろん、加害者対応にも役立てられることを願うばかりである。


 
  • 1) 例として、「Benchmark Animal Rehabilitative Curriculum (B.A.R.C.)」を挙げる:http://barceducation.org/
  • 2) American Psychiatric Association. (2013). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders Fifth Edition DSM-5®. Washington, DC: American Psychiatric Association Publishing.
  • 3) Gullone, E. (2003). The proposed benefits of incorporating non-human animals into preventative efforts for conduct disorder. Anthrozoos, 16, 160-174.
  • 4) 資料は2021年のものである:https://barceducation.org/wp-content/uploads/2021/10/State-Law-Chart-1.pdf
  • 5) Monsalve, S., Ferreira, F. & Garcia, R. (2017). The connection between animal abuse and interpersonal violence: A review from the veterinary perspective. Research in Veterinary Science, 114, 18-26.

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